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建築工事にコンティンジェンシー(予備費)はどれくらい必要か?

例題 · プロジェクトのコストとスケジュール · 2026年10月更新

この建築プロジェクトで80%の信頼水準に達するには、基準見積もり2,620(金額はすべてUSD千単位)に加えて259のコンティンジェンシーが必要です。見積もりに一律の割合を上乗せするのではなく、モンテカルロシミュレーションで求めた値です。基準見積もりは最も可能性の高いコストの合計ですが、5,000回の試行のうち94.2%では、それを上回るコストになります。

総コストが2,879以下に収まるのは結果の80%(P80)、2,937以下に収まるのは90%(P90)です。コンティンジェンシーは、選んだ水準と基準見積もりの差です。Excelファイルの予算2,900を超えるのは、結果の16.1%です。

モデル

Excelファイルは、ごく普通のコスト見積もりです。最も可能性の高いコストを入れた6つのコスト項目と、起きるかどうかわからない4つのリスクイベントの登録簿があり、2枚目のシートにスケジュールがあります。数式は=SUM(C3:C8)+SUM(E11:E14)のような通常のものだけで、アドインの関数は使っていません。

シミュレーションでは、各コスト項目に3点見積もりの範囲(最小から最頻を経て最大までのPERT分布)を与えます。各リスクイベントは確率どおりに発生し、発生すればそのコストが加わります。範囲はExcelファイルに入れず、xellstorm側で設定します。ダウンロードできるファイルには、通常の見積もりと同じく、最も可能性の高いコストとリスク登録簿が入っています。

コスト項目、USD千単位(PERT)
項目最小最頻最大
敷地工事100120170
基礎300340460
躯体7608201,010
MEP540610780
仕上げ400450560
設備機器260280330
リスクイベント
リスク確率発生時のコスト
地盤条件25%150
設計変更35%90
納入遅延20%60
悪天候30%40

基準見積もりが楽観的な理由

基準見積もりは、最も可能性の高いコストを足し合わせた2,620です。ところがコストの範囲は右に裾が長く、ある項目が最も可能性の高いコストを大きく上回ることはあっても、大きく下回ることはまれです。リスクイベントは基準見積もりではコストゼロですが、発生した結果ではコストがかかります。この2つが重なり、結果の平均は2,785と基準見積もりを165(6.3%)上回り、シミュレーション結果の合計の94.2%が基準見積もりより高くなります。基準見積もりは「ありそうな結果」ではなく、最良ケースに近い値です。

結果

総コスト、USD千単位:5,000回の試行
基準見積もり(最も可能性の高いコストの合計)2,620
シミュレーション合計の平均2,785
P50(結果の半数がこれより低コスト)2,776
P802,879
P902,937
最悪5%の平均(CVaR)3,035
予算2,900を超える確率16.1%
60週目より後に完了する確率27.2%
総コストの分布5,000回の試行による総コストのヒストグラム。基準見積もり2,620はピークの左にあり、予算2,900を超える棒(結果の16.1%)は強調表示しています。2,6002,8003,0003,200基準見積もり2,620予算2,900
各棒は試行の数を表し、予算を超える棒は強調しています。基準見積もりはピークよりかなり左にあります。
総コストの累積確率(S字カーブ)総コストのS字カーブ:P50 2,776、P80 2,879、P90 2,937。0%50%100%2,6002,8003,0003,200P50 2,776P80 2,879P90 2,937
S字カーブから、信頼水準50%、80%、90%で下回るコスト(予算)を読み取ります。
総コストを左右する要因総コストの分散寄与率(試行の順位から推定):地盤条件(リスク)32.9%、設計変更(リスク)15.8%、躯体14.9%、MEP14.3%、仕上げ6.6%、基礎6.1%。地盤条件(リスク)32.9%設計変更(リスク)15.8%躯体14.9%MEP14.3%仕上げ6.6%基礎6.1%
総コストの分散寄与率。アプリと同じく試行の順位から推定し、大きい順に並べています。

コンティンジェンシーの設定

コンティンジェンシーとは、望む信頼水準に達するために基準見積もりに上乗せする額です。S字カーブから読み取ります。

基準見積もり2,620に上乗せするコンティンジェンシー
信頼水準予算コンティンジェンシー
P502,776156
P802,879259
P902,937317

資本プロジェクトの予算をP50、P80、P90のいずれかで組む組織は多く、どの水準にするかは、超過リスクをどこまで受け入れるかという方針の問題です。基準見積もりに一律の割合を掛けても、範囲の幅も、プロジェクトが抱えるリスクもわかりません。シミュレーションなら、その両方を測れます。P50、P80、P90では、各水準の意味と、合計のP80が各項目のP80の合計にならない理由を解説しています。

xellstormでは、S字カーブにカーソルを合わせると、どのコストについても、それを下回る確率を読み取れます。確率ボックスに予算を入力すると、それを超える確率がわかります。

リスクを左右する要因

分散寄与率は、総コストのばらつきにどの入力がどれだけ効いているかを表します。xellstormはアプリの表示と同じく、試行の順位から推定します。最も大きいのは「地盤条件」リスクで32.9%、4つのリスクイベントを合わせると55.7%で、最大のコスト項目(14.9%)を上回ります。リスク登録簿はどのコスト項目よりも総コストを大きく動かすので、まず見るべきは最大のリスクです。たとえば、契約前に現地調査をする手があります。トルネード図と感度分析では、これらの指標を解説しています。

スケジュール:完了が遅れる確率

同じ実行でスケジュールもシミュレーションします。60週より後に完了するのは結果の27.2%で、P80の完了は60.7週です。所要期間もコストと同じで、最も可能性の高い値を大きく超えて延びることはあっても、大きく短くなることはまれです。悪天候が起きれば、その分の遅れも加わります。また、MEP(機械・電気・配管)と仕上げは並行して進むため、どの結果でも、長くかかる方が終わるまで待ちます。これらが重なって、最も可能性の高い所要期間から見込むよりも遅れやすくなります。スケジュールリスク分析で、それぞれの原因を測ります。

試してみる

  1. xellstormでモデルを開きます。入力、出力、2つの目標は設定済みです。インストールも登録も不要で、Excelファイルはブラウザー内で計算します。
  2. 実行します。シードと試行回数が同じなら、このページと同じ平均、P50、P80、P90、確率、要因が出ます。P50、P80、P90はパーセンタイル表の行です。
  3. 「Distributions」ステップで範囲やリスクの確率を変えて再実行すると、P90と予算超過の確率がどう動くかがわかります。
  4. 続いて、お手元の見積もりを開き、不確かなセルをモデルマップ上でクリックしてみましょう。

普通のExcelでもできますか?

はい。ただし手間は増えます。各見積もりを乱数を引く数式に置き換え、データテーブルで計算を繰り返し、結果を集計します。Excelでのモンテカルロシミュレーションでは数式を紹介し、ツールにモデルを実行させると何が変わるかも説明します。

よくある質問

コンティンジェンシーは、どの信頼水準に合わせるべきですか?

方針で決めることです。この例では、P50なら156、P80なら259、P90なら317が必要です。各水準の意味と、選ぶときに考慮すべき点は、P50、P80、P90で解説しています。

なぜPERT分布を使うのですか?

PERT分布は、三角分布と同じ3つの数値(最小、最頻、最大)を使いますが、最も可能性の高い値の近くに重みを置き、両端は軽くします。専門家の見積もりに向いた分布です。xellstormでは、三角分布、対数正規分布、ワイブル分布なども選べます。ExcelでのPERT分布もご覧ください。

P90で予算を組むのに、5,000回の試行で足りますか?

このモデルでは足ります。分布に依存しない95%区間で見ると、P90の誤差は±8程度で、P80とP90の差(58)に比べて小さく収まります。この区間の求め方はP50、P80、P90で、ほかのモデルについては必要な試行回数で説明しています。

リスクイベントに相関を付けるべきですか?

あるリスクが別のリスクを起きやすくするなら、付けます。2つに相関を与えるか、1つのセルで両方を動かします。この例では簡単にするため、独立にしています。

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