xellstorm
JA
アプリを開く

スケジュールリスク分析:プロジェクトが遅れる理由

ガイド · 2026年10月更新

プロジェクトが遅れるのは、最も可能性の高い所要期間で組んだスケジュールが楽観的だからです。ある建築プロジェクトでは、その所要期間なら55週目に完了しますが、5,000回のシミュレーション結果のうち、その時点までに完了するのは14.3%だけです。完了週の平均は58.2週目、P80の完了週は60.7週目で、60週目の期限を守れないのは、結果の27.2%です。

最頻の完了週と平均の完了週には3.23週間の差があり、原因は3つです。下振れより上振れの幅が大きい所要期間(2.50週間)、悪天候のリスク(0.60週間)、並行する2つの工種が合流する点で生じるマージバイアス(0.13週間)です。

スケジュールリスク分析とは

スケジュールリスク分析では、各アクティビティの所要期間を1つの数値ではなく幅で表し、作業を遅らせうるリスクイベントを加えて、その幅から引いた値でスケジュールを何千回も再計算します。これがモンテカルロシミュレーションです。結果は完了日の分布になり、期限を守れる確率や、P80のように選んだ信頼水準での完了日を読み取れます。P80は、シミュレーション結果の80%がその日までに完了する日です(P50、P80、P90を参照)。

単一値のスケジュールが答えるのは、「すべてのアクティビティが最も可能性の高い時間で終わったら、いつ完了するか」です。スケジュールリスク分析が答えるのは「各完了日はどのくらい起こりやすいか」で、前者の答えがたいてい早すぎる理由も見えてきます。

サンプルのスケジュール

建築プロジェクトのサンプルには、コスト見積もりと並んでScheduleシートがあります。7件のアクティビティは週単位で、設計・許認可・基礎・躯体が順に続き、その後にMEP(機械・電気・配管)と仕上げが並行し、最後に試運転が入ります。開始からの完了週は、次の1つの数式で求めます。=C2+C3+C4+C5+MAX(C6,C7)+C8+B10

MAX(C6,C7)は、並行する2つの工種のうち長い方を待ちます。B10は天候による遅れで、=Estimate!D14*2です。コスト見積もりのリスク登録簿にある悪天候リスクが起きると2週間(発生確率は30%)、起きなければ遅れはありません。シミュレーションでは、各所要期間に、最小・最頻・最大の3点で決まるPERT分布を与えます。

アクティビティの所要期間(週、PERT)
アクティビティ最小最頻最大平均
設計68128.33
許認可46126.67
基礎8101410.33
躯体14162216.67
MEP(並行)10121612.33
仕上げ(並行)8101510.50
試運転2353.17

最頻の完了週とシミュレーションの完了週

すべての所要期間を最頻値にし、天候による遅れがないとすると、Excelファイルの値は55週目です。単一値のスケジュールが約束するのは、この日です。シミュレーションでは、7件の所要期間と悪天候リスクをまとめて5,000回引きます。

完了週(開始からの週数):5,000回のシミュレーション結果
最頻の完了週(すべての所要期間が最頻値で、天候による遅れなし)55
シミュレーションした完了週の平均58.2
P50(半数の結果がこれより早く完了)58.2
P8060.7
P9062.1
55週目までに完了する確率14.3%
60週目より後に完了する確率27.2%
完了週の分布5,000回のシミュレーションの完了週のヒストグラム。最頻の完了週(55週目)に印を付けています。その時点までに完了する結果は14.3%だけです。60週目の期限より後のバー(結果の27.2%)は強調表示しています。5055606570最頻 55期限 60
各バーは、シミュレーションした完了週の数を表します。60週目の期限より後のバーは強調表示しています。灰色の点線は最頻の完了週(55週目)、赤い線は期限です。

完了週の平均は58.2週目で、55週目までに完了する結果は14.3%しかありません。60週目の期限は、P50(58.2)とP80(60.7)の間にあります。期限を守れる結果は72.8%、守れない結果は27.2%です。このスケジュールに雑な見積もりはありません。楽観的になるのは最頻値を足し合わせるためで、理由は3つあります。

プロジェクトが遅れる3つの原因

最頻の完了週と平均の完了週の差3.23週間は、ちょうど3つに分かれます。いずれも試行から測った値です。

最頻の完了週から平均の完了週まで(週)
最頻の完了週55.00
+ 所要期間の偏り2.50
+ 悪天候0.60
+ マージバイアス0.13
= シミュレーションした完了週の平均58.23
各原因が平均の完了週に加える週数試行から測った、各原因が平均の完了週に加える週数:所要期間の偏り2.50、悪天候0.60、マージバイアス0.13、合計3.23週間。所要期間の偏り2.50悪天候0.60マージバイアス0.13
5,000回の試行から測った、各原因が平均の完了週に加える週数。合計すると、最頻の完了週と平均との差の3.23週間になります。

所要期間の偏り:2.50週間。ここでは、どの幅も最頻値より上の方が下より大きく伸びています。アクティビティは、短縮できる幅より延びる幅の方が大きいのです。PERTの所要期間の平均は(最小 + 4 × 最頻 + 最大)/ 6なので、許認可は最小4週間、最大12週間、最頻6週間で、平均6.67週間かかります。最頻のスケジュールの経路に沿って(仕上げは、より長いMEPと並行するので除きます)、平均から最頻値を引いた差を足し合わせると2.50週間で、全体の差の77.4%にあたります。寄与が最も大きいのは許認可と躯体で、それぞれ0.67週間です。どちらも、幅は最頻の所要期間より上に6週間伸びる一方、下には2週間しか伸びません。

悪天候:0.60週間。このリスクイベントが起きるのは試行の30%で、そこでは2週間が加わり、残りでは何も加わりません。平均すると0.60週間です。0.60週間遅れる試行はありません。2週間遅れるか、まったく遅れないかのどちらかです。最頻のスケジュールは、起きない可能性の方が高いのでこのリスクを含めませんが、期限を守れない試行は、遅れが出た場合で40.9%、出ない場合で21.4%です。

マージバイアス:0.13週間。並行パスが合流する点では、作業は遅い方のパスを待ちます。MEPは平均12.33週間、仕上げは10.50週間かかるので、たいていはMEPがペースを決めます。しかし試行の15.0%では仕上げの方が長く、そのときは平均0.85週間長くなります。これらの試行が、MAX(C6,C7)の平均をMEPの平均より0.13週間押し上げます(15.0% × 0.85)。2つの所要期間のうち遅い方の平均は、それぞれの平均のうち遅い方より大きくなります。単一値のスケジュールでは、この差は見えません。

従来のPERT法のように、経路上の平均の所要期間を足し合わせると、57.5週目になります。所要期間の偏りによる楽観は取り除けますが、リスクイベントとマージバイアスは反映されません。スケジュールリスク分析がスケジュール全体をシミュレーションするのは、このためです。

並行パスの長さが近いとマージバイアスは大きくなる

ここでマージバイアスが3つの原因の中で最も小さいのは、MEPが仕上げより平均で1.83週間長く、仕上げがMEPを追い越すことがまれだからです。仕上げにMEPと同じ幅を与えて、同じ試行をもう一度実行してみます(ほかの入力は同じ乱数のままです)。

仕上げの幅:元のまま/MEPの幅(10〜16週間)
元のままMEPの幅を適用
最頻の完了週5555
仕上げがMEPより長くなる割合15.0%49.7%
マージバイアス(週)0.130.63
平均の完了週58.258.7
P80の完了週60.761.2
60週目より後に完了する確率27.2%32.8%

最頻の完了週は動きません。単一値のスケジュールには、2つの最頻の所要期間のうち長い方、つまりMEPの12週間しか見えないためです。しかし、仕上げが長くなる試行はおよそ半分になります。マージバイアスは0.63週間に増え、60週目より後に完了する確率は27.2%から32.8%に上がります。1つの点に合流するパスが多く、その長さが近いほどマージバイアスは大きくなるので、長さの近い並行パスが多いスケジュールは、たいていこのサンプルより大きなマージバイアスを抱えています。

P80の完了日を決める

80%の信頼水準での完了日は、シミュレーションした完了週のP80です。スケジュールバッファー(スケジュールのコンティンジェンシー)は、最頻の完了週と約束する日の間の時間です。

3つの信頼水準での完了週(開始からの週数)
信頼水準完了週55週目に対するバッファー
P5058.23.2
P8060.75.7
P9062.17.1

60週目の期限は信頼水準が72.8%で、P80に届きません。P80で約束するには、日付を60.7週目に移すか、完了日を左右するアクティビティ(次の節で示します)を短縮します。どの信頼水準を使うかは方針の決定で、コストのコンティンジェンシーと同じです。

xellstormでは、S字カーブにカーソルを合わせると、任意の週までに完了する確率が表示されます。確率ボックスに週を入力すれば、その週より後に完了する確率がわかります。

完了日を左右する要因

分散寄与率は、完了週のばらつきをどの入力が説明するかを示します。xellstormは試行の順位の回帰で推定します。アプリに表示される数値と同じものです。

完了週を左右する要因完了週の分散寄与率(試行の順位に対する回帰による推定):躯体23.4%、許認可23.4%、設計14.4%、基礎13.9%、MEP10.8%、悪天候10.2%、試運転3.5%、仕上げ0.4%。躯体23.4%許認可23.4%設計14.4%基礎13.9%MEP10.8%悪天候10.2%試運転3.5%
完了週の分散寄与率(アプリと同じく試行の順位に対する回帰による推定)、大きい順。悪天候は、天候による遅れの元になるリスクイベントです。表示していないもの:仕上げ0.4%。完了週の数式にないコスト項目とほかのリスクイベントは、合計でも0.1%未満です。

幅が最も広い2つのアクティビティ、許認可と躯体(最小から最大まで8週間)は、それぞれおよそ23%を説明します。コスト見積もりのリスクである悪天候は10.2%を説明します。仕上げが説明するのは0.4%だけです。仕上げが完了週を決めるのは試行の15.0%だけで、それ以外では所要期間は影響しません。コスト項目とほかのリスクイベントは完了週の数式にないので、本来の寄与はゼロで、推定でも合計で0.1%未満です。トルネード図のガイドでは、1つずつ動かすトルネード図が並行する2つの工種を読み違える様子を示しています。

限界:スプレッドシートのスケジュールであり、CPMネットワークではない

xellstormが計算するのはExcelファイル自身の数式で、スケジュールのロジックもその中にあります。順次のアクティビティは合計、パスが合流する点はMAXです。クリティカルパス法(CPM)のスケジューリングツールのような、アクティビティと依存関係のネットワークは背後にありません。依存関係の種類やラグ、カレンダー、資源平準化はなく、試行ごとのクリティカルパスも求めません。数式が表すことはxellstormがシミュレーションしますが、Excelファイルにないことは付け加えられません。

xellstormが開くのはExcelファイル(.xlsxと.xlsm)で、Primavera P6やMicrosoft Projectのファイルは読み込めません。こうしたツールで管理しているスケジュールは、このサンプルのように主要なパスをExcelファイルにモデル化するか、スケジュールファイルを読み込めるスケジュールリスクツールを使ってください。スプレッドシートが向くのは、初期の見積もり、並行パスが少ない要約スケジュール、同じファイルのコストモデルと結びついたスケジュールです。連携した数百のアクティビティからなる詳細なネットワークは、スケジューリングツールの領域です。

試してみる

  1. このモデルをxellstormで開きます。入力・出力・60週目の目標は設定済みです。インストールも登録も不要で、Excelファイルはブラウザー内で計算します。
  2. 実行して、完了週の結果を開きます。シードと試行回数を同じにすれば、このページと同じ数値になります。平均(その下にExcelファイルの値である55週目)、60週目より後に完了する確率、P90、P1〜P99のパーセンタイル(P80は60.7週目)です。
  3. 確率ボックスで<=を選び、55と入力すると、最頻の完了週を守れる結果がいかに少ないかがわかります。
  4. 「Distributions」ステップで、仕上げにMEPの範囲(10、12、16)を設定し、もう一度実行します。Excelファイルの値は55週目のままですが、平均とP80は後ろにずれます。
  5. HTMLレポート、PowerPointのスライド、結果ブックのいずれかをエクスポートします。結果ブックには全試行の入力と出力が入っているので、仕上げがMEPより長くなる頻度を数えられます。

よくある質問

プロジェクトスケジュールのマージバイアスとは?

マージバイアスとは、スケジュールの並行パスが合流する点で生じる余分な遅れです。次のアクティビティは最も遅いパスを待ち、複数の所要期間のうち最も遅いものの平均は、それぞれの平均のうち最も遅いものより大きくなります。単一値のスケジュールには現れません。建築のサンプルでは完了週の平均を0.13週間押し上げ、2つの並行する工種の幅が同じなら0.63週間押し上げます。

P80の完了日とは?

P80の完了日とは、シミュレーション結果の80%がその日までに完了する日で、プロジェクトがそれより遅れる確率は5回に1回です。スケジュール自体ではなく、スケジュールリスク分析から求めます。建築のサンプルでは、最頻の所要期間なら55週目に完了し、P80は60.7週目です。

平均の所要期間を足し合わせるだけではいけませんか?

クリティカルパス上の平均の所要期間を足し合わせる従来のPERT法は、所要期間の偏りは補正しますが、リスクイベントとマージバイアスは補正しません。建築のサンプルでは57.5週目になり、シミュレーションの平均は58.2週目です。その差が悪天候リスクとマージバイアスです。

xellstormでPrimavera P6やMicrosoft Projectのスケジュールを開けますか?

いいえ。xellstormが開くのはExcelファイル(.xlsxと.xlsm)だけで、Primavera P6やMicrosoft Projectのファイルは読み込めません。シミュレーションできるのは、スプレッドシートの数式で書かれたスケジュールです。たとえば、順次は合計、パスの合流はMAXで表す要約スケジュールで、連携したアクティビティのネットワークではありません。

アクティビティの所要期間には相関を付けるべきですか?

生産性の低さや、計画より複雑だった設計など、1つの原因が複数のアクティビティを延ばす場合は、所要期間に相関を付けるべきです。順次のアクティビティが相関していると、互いに打ち消し合わず一緒に遅れるので、完了日の幅が広がります。xellstormは入力を順位で相関させられます。このサンプルは、単純にするため独立のままにしています。

関連ページ

xellstormは、Excelモデル向けのブラウザー型モンテカルロシミュレーションツールです。アドインは不要で、Excelファイルがパソコンの外に出ることはありません。