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ExcelでPERT分布を使う:数式・平均・使いどころ

ガイド · 2026年10月更新

PERT分布は、3点見積もり(最小、最頻、最大)を、最小から最大まで引き伸ばしたベータ分布にしたものです。平均は(最小+4×最頻+最大)/ 6で、建物の躯体を760、820、1,010(USD千)と見積もると、平均は841.7になります。ExcelにPERT関数はありませんが、=BETA.INV(RAND(), α, β, min, max) でPERT分布から値を引けます。

形状パラメーターは α = 1 + 4 × (最頻値 − 最小値) / (最大値 − 最小値)、β = 1 + 4 × (最大値 − 最頻値) / (最大値 − 最小値) です。同じ3つの数値の三角分布は平均が863.3で、PERT分布より広く散らばります。

PERT分布とは

3点見積もりは、あり得ると考える最も低い値、最も可能性の高い値、最も高い値の3つです。PERT分布は、この3つの数値から結果の全範囲を描きます。最小を下回ることも最大を上回ることもなく、最頻値で山になり、両端に向かってなめらかに減ります。限界に近い値も起こりえますが、めったに出ません。

数学的には、ベータ分布の一種です。ベータ分布は、区間が固定され、2つの正の数α(アルファ)とβ(ベータ)で形が決まる分布の一族で、0〜1の区間を最小〜最大に引き伸ばして使います。PERTは、山が最頻値の位置に来て、平均が(最小+4×最頻+最大)/ 6になるようにαとβを選びます。最頻値を4回、両端を1回ずつ数える形です。重み4は、PERT(Program Evaluation and Review Technique)に由来します。1950年代後半に米海軍のポラリス・ミサイル計画のために開発されたプロジェクトスケジューリング手法で、各作業の期待所要期間を(楽観値+4×最頻値+悲観値)/ 6と見積もりました。プロジェクトマネージャーは今もこの式をPERTまたは3点見積もりと呼びます。この式は、この分布の平均にあたります。

PERTの数式(ml=最頻値)。建築の例の躯体の項目で計算:最小760、最頻820、最大1,010(USD千)
量数式と計算例
形状 α1 + 4 × (ml − min) / (max − min)
= 1 + 4 × (820 − 760) / 250 = 1.96
形状 β1 + 4 × (max − ml) / (max − min)
= 1 + 4 × (1,010 − 820) / 250 = 4.04
平均(min + 4 × ml + max) / 6
= 5,050 / 6 = 841.7
標準偏差√((mean − min) × (max − mean) / 7)
= 44.3
山の頂点(最頻値)ml
= 820

平均の841.7が最頻値より上にあるのは、範囲が最頻値より上(820〜1,010)の方が下(760〜820)より広いからです。コストや所要期間の見積もりは、たいていこのように偏っています。最も可能性の高いコストの合計が楽観的になるのもそのためで、プロジェクトのコンティンジェンシーの例でわかります。標準偏差を求める昔ながらのPERTの簡便法、(最大値 − 最小値) / 6は近似にすぎません。ここでは41.7で、上の式では44.3です。

ExcelでのPERTの数式

ExcelにPERT関数はありませんが、BETA.INV(probability, alpha, beta, A, B) なら、AからBまでの任意の区間に引き伸ばしたベータ分布の値が得られます。見積もりの最小、最頻、最大がセルB2、C2、D2にあるとします。

ExcelでのPERT:最小がB2、最頻がC2、最大がD2
項目数式
ランダムに引く=BETA.INV(RAND(), 1+4*(C2-B2)/(D2-B2), 1+4*(D2-C2)/(D2-B2), B2, D2)
平均(E2)=(B2+4*C2+D2)/6
標準偏差=SQRT((E2-B2)*(D2-E2)/7)
P90=BETA.INV(0.9, 1+4*(C2-B2)/(D2-B2), 1+4*(D2-C2)/(D2-B2), B2, D2)

確率に RAND() を使うと、再計算のたびに新しい値を引きます。確率を固定すると、BETA.INV はそのパーセンタイルをシミュレーションなしで直接返します。躯体の項目では、0.9で904.1、0.1で786.9です。Excel 2007以前の名前 BETAINV も、引数は同じです。2つの形状の式はどちらも最大値 − 最小値で割るので、最小と最大は異なる値でなければなりません。

1つの項目のパーセンタイルは、合計のパーセンタイルではありません。複数の項目のP90を足しても、合計のP90にはなりません(P50、P80、P90を参照)。合計を求めるにはシミュレーションが必要です。Excelのみの場合は、Excelでのモンテカルロシミュレーションで説明しているように、データテーブルなどで何千回もの再計算結果を集めることになります。

PERT分布と三角分布:同じ3つの数値でも答えは違う

三角分布も同じ最小、最頻、最大を使いますが、密度は最小から最頻値まで直線的に上がり、最大まで直線的に下がります。平均は(最小+最頻+最大)/ 3で、最頻値は4回ではなく1回しか数えないので、遠い側の限界が平均をより強く引っ張ります。躯体の項目では、2,590 / 3 = 863.3で、PERTの841.7より約22高くなります。標準偏差 √((min² + ml² + max² − min × ml − min × max − ml × max) / 18) は53.3で、PERTの44.3を上回ります。

モデルでどれだけ違いが出るかを見るため、建築の例の5,000回の試行を、同じシードで2回実行しました。1回は公開どおり、躯体をPERT分布にしたもの。もう1回は、躯体を同じ3つの数値の三角分布に切り替えたものです。ほかの入力は2回とも完全に同じ値を引き、躯体にも各試行で同じ乱数を使うので、2回の実行の違いはこの1つの分布の形だけです。

躯体の項目(USD千):最小760、最頻820、最大1,010。各5,000回の引き
躯体の項目PERT三角分布
平均(数式)841.7863.3
平均(引いた値)841.7863.3
標準偏差(数式)44.353.3
標準偏差(引いた値)44.353.3
引いた値のP10786.9798.7
引いた値のP90904.1941.1
PERTのP90を超える引き10.0%23.6%
躯体の項目:PERT分布と三角分布からの引き躯体の項目を最小760、最頻820、最大1,010として各5,000回引いた値のヒストグラム。棒で示したPERT分布は最頻値付近で山になり、両端に向かってなだらかに減ります。破線の輪郭で示した三角分布は最大に向かって直線的に下がり、上側の裾に引きが多くなります。PERTの平均は841.7、三角分布の平均は863.3です。最小 760最頻 820最大 1,010PERTの平均 841.7三角分布の平均 863.3PERT三角分布
躯体の項目、各5,000回の引き(USD千)。棒:PERT分布、破線:同じ3つの数値による三角分布。三角分布は長い上側の裾に引きが多く、そのぶん平均が高くなります。

引いた値は、表示した桁まで式と一致します。平均は841.7と863.3です。xellstormの既定のラテンハイパーキューブサンプリングが効いています。各入力について、範囲を等確率に分けた5,000個のスライスのそれぞれから、ちょうど1つずつ引くためです。三角分布の方が幅が広く、P10〜P90の幅は142.4で、PERTの117.2を上回ります。PERTのP90(904.1)を超える引きは、PERT自身では10%ですが、三角分布では23.6%です。ただし、両側が広がるわけではありません。最小の近くではPERTの方が引きが多く、三角分布のP10は798.7と、PERTの786.9より高くなります。最頻値が下端に近いので、三角分布は重みを長い上側の裾に移します。対称な見積もりなら、両端の重みが増えます。

6項目のうち1項目だけで、合計が動きます。躯体を三角分布にすると、総コストの平均は2,785から2,806に上がります。項目の平均が上がった分と同じ幅です(ほかの引きはすべて同じ)。P90は27上がり、予算2,900を超える確率は16.1%から20.8%に上がります。

建築プロジェクトの総コスト(USD千):躯体をPERT分布にした場合と三角分布にした場合
総コストPERT三角分布
平均2,7852,806
P902,9372,964
予算2,900を超える確率16.1%20.8%

どちらの形も、正しいとも間違いとも言えません。同じ3つの数値を2通りに読んだだけです。意識して選び、予算がどちらに基づくかを明示してください。

PERT分布、三角分布、対数正規分布の使い分け

機械加工の寸法のように、目標値のまわりで対称にばらつくものは、通常は正規分布です。公差積み上げの例がそうです。

xellstormでPERT分布を入力する

xellstormはExcelファイルをブラウザー内で計算し、分布はファイルの外に保持するので、ファイルに BETA.INV の数式を入れる必要はありません。

  1. Excelファイルを開き、モデルマップで不確かなセルをクリックして「Make input」を選びます。新しい入力は、セルに保存されている値の90%〜110%のPERT分布から始まります。
  2. 「Distributions」ステップで、Distribution列をPERTのままにして、最小、最頻、最大を入力します。Shape、Mean、P10 – P90の列は入力に合わせて更新されるので、実行前に3つの数値が何を意味するかがわかります。
  3. 見積もりがすでにExcelファイルにあり、入力の隣のセルにMin、Likely、Max(またはLow、Base、High)というラベルが付いている場合は、サイドパネルに「Link to these cells」が表示されます。リンクしたPERTは実行のたびにそのセルを読み取るので、シートを編集しても、編集後のExcelファイルを開いて保存したプロジェクトを適用すれば引き継がれます。リスク登録簿の例がこの方法です。
  4. 低と高が限界ではなくP10とP90の場合は、代表値をP50として、サイドパネルの「Fit from estimates」に入力し、分布の形をPERT、Normal、Lognormal、Triangularから選びます。xellstormはその形で最も近い分布を探し、当てはめ誤差を表示します。過去の値に当てはめるなら「From data」タブを使います。
  5. 形を比較するには、入力の分布をTriangularに変えたシナリオを追加し、同じ3つの数値を入力します。シナリオは同じ乱数で実行し、「Results」ステップが、それぞれを基準ケースと比べます。

@RISK、ModelRisk、Analytic Solver用のExcelファイルには、PERT関数(RiskPert、VosePERT、PsiPert)が入っていることがよくあります。「Import from workbook」は、単独の関数、または正の乗数1つに最大1つのオフセットを付けた関数を入力に変換します。VosePERT(E7,1,F7)*D7 がその一例です。セルを使った引数と乗数は、算術式も含めてリンクを保ち、各シナリオの固定セルを適用してから読み直します。上の BETA.INV の数式も、同等のベータ入力に変換します。2つの形状の計算と最小・最大は、セルにリンクしたままです。割り算を明示しているので、最小と最大が異なる必要がある点は同じです。最小、最頻、最大がすべて等しいPERT入力は、その1つの値を引きます。

よくある質問

PERT分布の平均の式は何ですか?

PERT分布の平均は(最小+4×最頻+最大)/ 6で、最頻値を4回、両端を1回ずつ数えます。760、820、1,010の見積もりでは、5,050 / 6 = 841.7です。プロジェクトマネジメントでは、同じ式をPERTまたは3点見積もりと呼びます。

PERT分布の標準偏差はいくつですか?

PERT分布の標準偏差は √((mean − min) × (max − mean) / 7) です。簡便法の(最大値 − 最小値) / 6は近似にすぎません。760、820、1,010の見積もりでは、簡便法は41.7、式で求めると44.3です。

PERT分布はベータ分布と同じですか?

PERT分布はベータ分布の一種です。最小から最大まで引き伸ばし、形状パラメーターを最頻値で決めたもので、α = 1 + 4 × (最頻値 − 最小値) / (最大値 − 最小値)、β = 1 + 4 × (最大値 − 最頻値) / (最大値 − 最小値) です。形状パラメーターが違うベータ分布はPERTではありません。ベータ分布なので、Excelの BETA.INV で値を引けます。

PERT分布と三角分布のどちらを使うべきですか?

PERT分布と三角分布は同じ最小、最頻、最大を使いますが、三角分布の方が広く散らばり、偏った見積もりでは長い側に寄ります。躯体を760、820、1,010(USD千)と見積もった場合、三角分布の平均は863.3、PERTは841.7です。最頻値を最も信頼していて、限界にはめったに届かないならPERT、より慎重な広がりが欲しい場合や、限界に近い値が現実的な場合は三角分布を使います。

ExcelでPERT分布のP90を求めるには?

1つのPERT入力のP90は、確率を0.9にした BETA.INV でそのまま求まります。=BETA.INV(0.9, 1+4*(ml-min)/(max-min), 1+4*(max-ml)/(max-min), min, max) で、760、820、1,010の見積もりでは904.1になります。このページのシミュレーションで引いた5,000個の値は、ラテンハイパーキューブサンプリング(範囲を等確率に分けた各スライスから1つずつ引く)の効果もあり、これを904.1で再現します。複数の不確実な項目の合計のP90が必要なら、シミュレーションを実行してください。パーセンタイルは足し合わせられません。

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