NPVがマイナスになる確率は?
新製品ラインのこの事業計画では、基準ケースは割引率9%でNPV 562(USD千単位)、IRR(内部収益率)17.2%ですが、10,000回の試行のうち29.6%でNPV(正味現在価値)がマイナスになります。この確率を求めるには、不確かな前提を範囲から引いてキャッシュフローモデルを何千回も実行し(モンテカルロシミュレーション)、NPVがゼロを下回る結果を数えます。
NPVの平均は268で、IRRが9%に届かないのは、NPVがマイナスになるまさにその結果です。基準ケースは1つの結果にすぎず、しかも有利な結果です。シミュレーション結果の73.7%が、それより悪い結果になります。
モデル
Excelファイルは、2枚のシートからなる普通の5年間の事業計画です。Assumptionsシートには、Low、Base、Highの列を持つ表があり、投資額、1年目の販売量とその伸び、単価、1個あたり原価が入っています。固定費、運転資本、税、割引率は、それぞれ値が1つだけです。Modelシートは、Baseの列から年ごとの売上高、EBITDA、減価償却費、税、運転資本の増減を求め、最後にフリーキャッシュフロー、NPV、IRRを出します。数式は通常のものだけで、アドインの関数は使っていません。製品ラインは5年間続き、運転資本は5年目に戻り、その後の収益はありません。税はEBITの25%で、損失が出ると、会社の他の利益にかかる税が減ります。
シミュレーションでは、範囲を与えた前提はそれぞれ、低から基準を経て高までのPERT分布になり、3つのパラメーターは表のセルを参照します。表を編集すればシミュレーションにも反映され、数値のコピーを別に持つことはありません。競合は30%の確率で参入し、3年目から価格を10%引き下げます。材料費が両方を押し上げるので、単価と1個あたり原価は順位相関0.6で連動して動きます。
| 前提 | 低 | 基準 | 高 |
|---|---|---|---|
| 投資額 | 1,800 | 2,000 | 2,600 |
| 1年目の販売量 | 30 | 40 | 50 |
| 年間の販売量の伸び | 2% | 8% | 13% |
| 単価(USD) | 54 | 60 | 65 |
| 1個あたり原価(USD) | 31 | 34 | 40 |
| 固定費、1年目 | 400 |
|---|---|
| 固定費の年間上昇率 | 3% |
| 競合参入時の値下げ幅 | 10% |
| 運転資本(売上高比) | 15% |
| 税率 | 25% |
| 割引率 | 9% |
| 競合が参入する確率(値下げは3年目から適用) | 30% |
NPVのセルは=B14+NPV(Assumptions!C16,C14:G14)です。ExcelのNPV()は最初に渡された値を丸1年分割り引くため、0年目の投資額は関数の外で足します。中に入れると、すべてのキャッシュフローが1年分余計に割り引かれ、NPVが1 + 割引率で割られます。ここでは562ではなく515になります。IRRのセルは=IRR(B14:G14)で、6つのキャッシュフローすべてを対象にします。
基準ケースが期待値にならない理由
事業計画は通常、基準ケース(すべての前提が最も可能性の高い値)で示されます。シミュレーション結果が基準ケースを下回る要因は2つあります。1つは競合です。基準ケースにはまったく含まれていませんが、30%の確率で参入し、参入するとNPVの平均は410ではなく−62になります。もう1つは、痛手になる側で範囲が偏っていることです。投資額は、基準2,000に対して、良くても1,800、悪ければ2,600まで振れうるので、シミュレーションでの平均は2,067です。1個あたり原価は基準34から、下側(31)より上側(40)に大きく振れ、単価と販売量の伸びは、逆に上側より下側に大きく振れます。
この2つが重なり、NPVの平均は268と、基準ケースの562を294下回ります。Baseの値はどれも最も可能性の高い値で、基準ケースは、うまくいかない場合を含めていないだけです。
結果
| 基準ケース(すべての前提が基準、競合なし) | 562 |
|---|---|
| シミュレーションしたNPVの平均 | 268 |
| P10(結果の10%がこれより低い) | −328 |
| P50 | 253 |
| P90 | 884 |
| 最悪5%の平均 | −626 |
| NPVがマイナスになる確率 | 29.6% |
| IRRが9%を下回る確率 | 29.6% |
| IRR:基準ケース / P50 | 17.2% / 12.7% |
NPVとIRRの結論は同じ
割引率9%でNPVがマイナスなら、プロジェクトの収益は年9%を下回っており、IRRが9%を下回るのも同じ意味です。このモデルでは、どちらも同じ29.6%の結果で、試行ごとに一致します。キャッシュフローは投資から始まり、1回だけプラスに転じるため、どの結果でもIRRは1つに定まります。IRR自体の範囲は、P10が3.8%、P50が12.7%、P90が21.4%で、基準ケースは17.2%です。
シミュレーションして報告するには、NPVのほうが適しています。NPVは加算できるので、シミュレーションしたNPVの平均は期待キャッシュフローのNPVに等しく、どの結果でも定義できます。大規模な中間改修や終了時の撤去費用などでキャッシュフローの符号が2回以上変わるプロジェクトでは、IRRが複数になったり、存在しなかったりすることがあります。
価値を左右する要因
分散寄与率は、NPVのばらつきにどの前提がどれだけ効いているかを表します。xellstormはアプリの表示と同じく、試行の順位から推定します。最大は1年目の販売量で32.8%、次いで単価が24.1%、競合が18.0%、1個あたり原価が15.8%です。この寄与率は、各入力が単独で動くものとして計算したものです。単価と1個あたり原価は連動して動くため、寄与率は重なります。2つを合わせると、回帰が説明する分のうち約22%で、個別の寄与率を足した39.9%にはなりません。事業計画で最も議論されがちな投資額が説明するのは、わずか4.5%です。販売量の市場調査と、競合が現れたときの価格戦略のほうが、資本予算の見直しをもう一巡するより範囲を狭められます。トルネード図と感度分析では、これらの指標を解説しています。
連動して動く前提
単価と1個あたり原価を独立に引くと、事業の実態よりも頻繁に高コストと低価格が組み合わさり、リスクを過大に見積もります。NPVの標準偏差は463ではなく535、NPVがマイナスになる確率は29.6%ではなく31.9%、P5は−473ではなく−590になります。相関を省いたときの誤差は、どちら向きにもありえます。ここのようにコストと価格が一緒に上がる場合は、省くと実際よりリスクが高く見えます。xellstormでは、相関は各入力の分布を変えずに乱数の並びだけを入れ替えます。相関は過去のデータから推定することもできます。
試してみる
- xellstormでモデルを開きます。入力、出力、相関、目標「NPVがゼロ未満」は設定済みです。インストールも登録も不要で、Excelファイルはブラウザー内で計算します。
- 実行します。シードと試行回数が同じなら、このページと同じ数値が出ます。S字カーブにカーソルを合わせると、NPVがある値を下回る確率を読み取れます。
- 「Distributions」ステップで範囲を変えるか、シナリオで競合の確率を設定して再実行すると、NPVがマイナスになる確率がどう動くかがわかります。
- 続いて、お手元の事業計画を開き、不確かな前提をシート上またはモデルマップで選びます。「Distributions」ステップでは、前提の隣にあるLow / Base / Highの表を、ワンクリックで分布にリンクできます。
普通のExcelでもできますか?
はい。ただし手間は増えます。各前提を乱数を引く数式に置き換え、データテーブルで計算を繰り返し、マイナスのNPVを数えます。Excelでのモンテカルロシミュレーションでは数式を紹介し、ツールにモデルを実行させると何が変わるかも説明します。
よくある質問
NPVがマイナスなら、プロジェクトは赤字ですか?
必ずしもそうではありません。NPVがマイナスとは、プロジェクトの収益が割引率(ここでは年9%)を下回るということで、投資額を現金で回収できる場合もあります。このモデルでは、NPVがマイナスの結果の89%で、投資した額より多くの現金が戻ります。NPVがマイナスだと失われるのは、同じリスクで他に投資していれば得られた収益と比べた価値です。
ExcelのNPV関数で答えが違うのはなぜですか?
NPV(rate, values)は、最初の値が1期後に入るものとして扱います。0年目の投資額を範囲に含めると、すべてのキャッシュフローが1年分余計に割り引かれます。このファイルのように0年目のキャッシュフローは関数の外で足すか、日付つきのXNPVを使います。
割引率はいくらにすべきですか?
プロジェクトの資本コスト、つまり投資家が市場リスクに対して求める収益率です。シミュレーションはプロジェクト固有の不確実性をキャッシュフローに織り込むため、ハードルレートによくあるように、それらのリスク分まで上乗せした率を使うと、二重に数えてしまいます。
報告するのは平均NPVですか、基準ケースですか?
平均NPVはプロジェクトの期待値で、代替案と比べる数字です。基準ケースは、数ある結果のうちの1つです。平均は、NPVがマイナスになる確率と、P10〜P90のような範囲(ここでは−328〜884)とあわせて報告すると、読み手は中間だけでなく下振れも把握できます。
試行回数はどれくらい必要ですか?
報告する数値が、実行のたびに動かなくなる程度です。シミュレーションで求めた平均のサンプリングノイズは、試行回数が4倍になるごとに半分になります。この例では10,000回です。xellstormは、平均とパーセンタイルが選んだ許容誤差内に収まるまで実行を続けることもできます。必要な試行回数もご覧ください。
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