公差積み上げ解析:最悪ケース、RSS、モンテカルロのどれを使うか?
この例では、6個の公差をすべて足し合わせる(最悪ケース)と、すきまは0.120 mmまで縮む可能性がありますが、RSSでは必要な0.4 mmに届かない組立品はわずか3.29%、20,000台のモンテカルロシミュレーションでは3.21%です。最悪ケースからわかるのは、すべての組立品が必ずはまるかどうか。RSSとモンテカルロシミュレーションからわかるのは、はまらない組立品がどのくらいの頻度で出るかです。
この例は、100.00 ± 0.10 mmのハウジングに5個の部品を収め、公称のすきまが0.500 mmというものです。各公差を標準偏差の3倍とみなすと、二乗和平方根(RSS)から、すきまの標準偏差は0.0544 mmと求まります。同じ正規分布の仮定では、最悪ケースほど小さいすきまが生じるのは、組立品約730×10⁹台に1台です。実際には起こりません。
モデル
Excelファイルは、Stackシート1枚の公差表です。ハウジングと、その内側に端から端まで積み重ねた5個の部品があり、それぞれに公称寸法(B列、mm)と±の公差(C列)があります。D列の「Actual」は、実際に製作した寸法で、保存したファイルでは公称と同じです。D9のすきまは、ハウジングから部品を引いた=D2-SUM(D3:D7)で、D10はB列から同じ方法で公称のすきまを求めます。アドインの関数は使っていません。
シミュレーションでは、各「Actual」セル(D2〜D7)を、公称を平均、公差の3分の1を標準偏差とする正規分布にします。公差は標準偏差の3倍(3σ)とみなすので、部品の99.73%が公差内に収まります。目標では、すきまが0.4 mm未満を不合格として数えます。組立品に必要な最小のクリアランス、たとえば熱膨張の余裕を確保する値と考えてください。
分布と目標は、サンプルをxellstormで開くと最初から設定されています。ダウンロードするファイルには、通常の公差表と同じく、寸法、公差、数式だけが入っています。標準偏差はC列にリンクせず、シミュレーションの設定に直接入力してあるので、Excelファイルの公差を変えたら、標準偏差も変えてください。
| 寸法 | 公称 | 公差 | 標準偏差 |
|---|---|---|---|
| ハウジング | 100.00 | ±0.10 | 0.0333 |
| 部品1 | 19.80 | ±0.05 | 0.0167 |
| 部品2 | 24.60 | ±0.06 | 0.0200 |
| 部品3 | 15.30 | ±0.04 | 0.0133 |
| 部品4 | 20.10 | ±0.05 | 0.0167 |
| 部品5 | 19.70 | ±0.08 | 0.0267 |
最悪ケース:公差を足し合わせる
最悪ケース(算術)の積み上げでは、すべての寸法が同時に最も不利な限界にあると考えます。ハウジングは最小の99.90 mm、すべての部品は最大です。すきまの公差は、6個の公差の和、±0.38 mmで、すきまは0.120〜0.880 mmのどこかに収まります。
これは保証です。公差内の部品で作った組立品は、この範囲の外に出ることはありません。ただ、最小値0.4 mmと比べると、この設計は書類上は不合格です。合格するには、公差の合計が、公称のすきまと最小値の差の0.100 mm以下でなければなりません。すべての公差を同じ比率で縮めるなら、それぞれ元の26%にします。最悪ケースでは、すきまが実際にどのくらいの頻度で足りなくなるかはわかりません。
RSS:二乗和平方根
寸法が独立にばらつく場合、足し合わされるのは公差ではなく分散です。各標準偏差を公差の3分の1とすると、すきまの標準偏差は6個の分散の和の平方根で、0.0544 mmです。言い換えると、公差の二乗和の平方根であるRSS公差は±0.163 mmで、すきまの標準偏差の3倍にあたります。すきまの99.73%が0.337〜0.663 mmに収まります。±の範囲として読むと、RSSでもこの設計は不合格です。0.337 mmが最小値を下回るためです。
ただし、RSSからは確率も出せます。独立な正規分布の寸法の和は、それ自体が正規分布で、公称のすきま0.500 mmを中心とします。したがって、すきまが0.4 mm未満になる確率は、正規分布の式からそのまま求まります。最小値は公称のすきまより標準偏差の1.84倍下にあり、正規分布のうちそれより外側にあるのが3.29%です。このファイルでは、Excelの=NORM.DIST(0.4, D10, SQRT(SUMSQ(C2:C7))/3, TRUE)で同じ値が得られます。
この確率は、いくつかの仮定の上に成り立っています。寸法は互いに独立で正規分布に従い、公称を中心とすること、各公差が標準偏差の3倍であること、すきまが単純な和であることです。
モンテカルロ:組立品を20,000回作る
モンテカルロシミュレーションは、組立品を何度も作ります。各試行で、6個の寸法をそれぞれの分布から引き、Excelファイルを再計算して、すきまを記録します。シミュレーションした20,000個のすきまのうち、641個(3.21%)が0.4 mm未満で、理論値は3.29%です。この差はサンプリングノイズです。20,000回の試行では、3.29%付近の割合の不確かさは、±0.13パーセントポイント程度です。これは単純なランダムサンプリングの標準誤差1つ分です。既定のラテンハイパーキューブサンプリングは、各寸法について、分布を同じ確率で分けた20,000個のスライスから1回ずつ引きます。通常は精度が少し上がり、ここのように結果が各入力に対して一方向にしか動かない場合は、悪くなることはありません。シミュレーションの平均と標準偏差も、RSSの値と一致します。
| RSS(理論値) | シミュレーション | |
|---|---|---|
| すきまの平均 | 0.5000 | 0.5000 |
| 標準偏差 | 0.0544 | 0.0543 |
| 0.4 mm未満のすきま(目標) | 3.29% | 3.21% |
| 0.337 mm未満のすきま(RSSの限界、3σ) | 0.135% | 0.105% |
| 0.120 mm未満のすきま(最悪ケースの限界) | 1.4 × 10−12 | 20,000回中なし |
最悪ケースはどのくらい保守的か?
| 方法 | すきまの範囲 | 0.4 mm未満 |
|---|---|---|
| 最悪ケース:公差を足し合わせる | 0.120–0.880 | 起こりうる(確率は出せない) |
| RSS:二乗和平方根、±3σ | 0.337–0.663 | 3.29% |
| モンテカルロ:全20,000回の試行 | 0.287–0.719 | 3.21% |
非常に保守的です。すきまが0.120 mmに達するには、寸法の合計が不利な側に0.38 mmずれる必要があります。すべての部品が公差内なら、6個すべてが同時に限界にあるということです。同じ正規分布の仮定では、これほど小さいすきまは公称のすきまより標準偏差の6.99倍下にあり、その確率は1.4 × 10−12、つまり組立品約730×10⁹台に1台です。実際の工程が、裾のそこまで遠くまで正規分布に従うことはほとんどなく、検査で公差外の部品も除かれるので、この数字は「実質的にあり得ない」という意味にとどめて読んでください。シミュレーションも同じことを示します。20,000個のすきまのうち最小は0.287 mmです。
保証には代償があります。最悪ケースで0.4 mmを満たすには、公差を比例して元の値の26%まで縮める必要があります。3σのRSSでは61%まで縮めますが、それでも最小値を下回るすきまが0.135%残ります。公差を厳しくするほど、加工と検査にコストがかかります。組立品の3.29%が0.4 mm未満になることを受け入れるか、減らすためにコストをかける価値があるかは、設計上の判断です。統計の答えは、何と何を天秤にかけているのかを示します。
どの公差から厳しくするか
すべての公差が3σの線形の積み上げでは、各寸法がすきまの分散に占める割合は、その公差の二乗を、公差の二乗和で割った値です。ハウジングの±0.10 mmが37.6%、部品5の±0.08 mmが24.1%、部品3の±0.04 mmはわずか6.0%を占めます。公差は二乗で効くので、大きな公差が支配的になります。RSSの式では、ハウジングの公差を半分の±0.05 mmにすると、0.4 mm未満のすきまの割合は3.29%から1.50%に下がります。一方、部品3の公差を半分の±0.02 mmにしても、2.99%までしか下がりません。
| 寸法 | 公差(mm) | 理論上の割合 | アプリ(シミュレーション) |
|---|---|---|---|
| ハウジング | ±0.10 | 37.6% | 38.0% |
| 部品5 | ±0.08 | 24.1% | 24.0% |
| 部品2 | ±0.06 | 13.5% | 13.6% |
| 部品1 | ±0.05 | 9.4% | 9.4% |
| 部品4 | ±0.05 | 9.4% | 9.3% |
| 部品3 | ±0.04 | 6.0% | 5.8% |
アプリの分散寄与率の表は、同じ割合をシミュレーションした試行の順位から推定します。ハウジングでは38.0%で、理論値は37.6%です。割合を求める式がないモデルでは、この表とトルネード図で、厳しくすべき寸法を見つけます。トルネード図と感度分析を参照してください。
モンテカルロが役立つとき
ここでRSSとモンテカルロが一致するのは、このサンプルがRSSのすべての仮定を満たしているからです。最も効いている仮定は、各公差が正規分布の標準偏差の3倍であることです。そうではなく、たとえば切削工具がバッチの間ずっと一定の速さで摩耗して、寸法が公差の帯の中に均等に散らばるとします。すると、各寸法は一様分布になり、標準偏差は公差を√3で割った値で、正規分布の場合の1.73倍です。
同じ乱数を使うシナリオで、各寸法を公称 − 公差から公称 + 公差までの一様分布にして実行すると、0.4 mm未満のすきまは14.99%になります(先ほどは3.21%)。一様分布の寸法の理論値は、一様分布の和の分布から求めて15.03%です。一様分布の標準偏差(すきまで0.0942 mm)を使ったRSSは14.41%で、近いものの低めです。RSSはすきまを依然として正規分布とみなしますが、6個の寸法のうち1つが分散の37.6%を占める状態では、すきまは完全な正規分布にならないためです。最悪ケースはまったく動きません。寸法の分布を無視しているからです。
つまり、独立な寸法の単純な和なら、正しい標準偏差を使ったRSSで近い値が得られます。モンテカルロが力を発揮するのは、積み上げがもっと単純でないときです。角度や半径に依存するすきま、数式にMAXやIFがある場合、偏った分布や検査で打ち切られた分布、一緒に変動する寸法、すでにスプレッドシートにあるモデルなどです。xellstormは試行ごとにExcelファイルを再計算するので、すきまは、解析用に書き直した和ではなく、ファイル自身の数式が寸法から出した値です。
試してみる
- このモデルをxellstormで開きます。6個の寸法が入力、D9のすきまが出力で、0.4 mm未満のすきまが目標です。インストールも登録も不要で、Excelファイルはブラウザー内で計算します。
- 実行します。シードと20,000回の試行を同じにすれば、このページと同じ数値になります(アプリは割合を小数点以下1桁に丸めます。例:3.2%)。結果には、すきまの平均、0.4 mm未満になる確率、組立品の90%が超えるP10の0.430 mmが表示され、パーセンタイル表はP1まで続きます。
- 確率ボックスにRSSの下限0.337 mmなど別の最小値を入力するか、S字カーブにカーソルを合わせれば、任意の値未満のすきまの確率がわかります。
- 「Distributions」ステップで、「Uniform within tolerance」という名前のシナリオを追加し、各寸法の分布を「Uniform」に変えて、minを公称 − 公差、maxを公称 + 公差にします(ハウジングでは99.90と100.10)。もう一度実行すると、シナリオの表で、同じ乱数のまま基準ケースと比べられます。2つ目のシナリオでハウジングのsdを0.0333から0.0167へ半分にすれば、ハウジングの公差を厳しくすると何が得られるかがわかります。
- 続いてお手元の公差表を開き、各寸法をsd = 公差 / 3(または工程データが示すばらつき)の正規分布の入力にして、すきまを出力に選びます。
普通のExcelでもできますか?
できます。RSSの確率は、上のNORM.DISTの1つの数式です。モンテカルロシミュレーションでは、各Actualの値を=NORM.INV(RAND(), B2, C2/3)のような数式に置き換え、データテーブルで計算を数千回繰り返して、0.4 mm未満のすきまをCOUNTIFで数えます。方法と、ツールがExcelファイルを実行するときに何が変わるかは、Excelでのモンテカルロシミュレーションをご覧ください。
よくある質問
公差積み上げとは?
公差積み上げとは、複数の部品の公差が、それらすべてで決まる寸法(たとえばハウジングと内側の部品の間に残るすきま)にどう合成されるかを計算することです。よく使う方法は3つあります。最悪ケース(公差を足し合わせる)、RSS(独立なランダムなばらつきとして合成する)、モンテカルロシミュレーション(ランダムな寸法で組立品を何度も作る)です。
最悪ケースとRSSの公差解析の違いは何ですか?
最悪ケースの公差解析は公差を足し合わせます。公差内の部品のあらゆる組み合わせをカバーする一方、すべてが同時に限界にあると仮定します。RSS(二乗和平方根)は、公差の二乗和の平方根を取る方法です。ばらつきを独立でランダムなものとして扱い、各公差が標準偏差の3倍なら、組立品の99.73%が収まる範囲が求まります。この積み上げでは、最悪ケースが±0.38 mm、RSSが±0.163 mmです。
なぜ公差を標準偏差の3倍とみなすのですか?
公差を標準偏差の3倍(3σ)とみなすのは、中心がそろい正規分布に従う工程で、部品の99.73%が公差内に収まる、工程能力指数(Cp)が1の状態を表します。工程能力が高いほど標準偏差は小さく、不合格は少なくなります。出力が帯の中で均等に広がる工程では不合格が増え(上の一様分布のシナリオのとおり)、中心がずれた工程では、公差外の部品が増え、すきまがどちらかの方向にずれます。測定値があるときは、代わりにその工程自身の平均と標準偏差を使ってください。
公差シミュレーションには何回の試行が必要ですか?
公差シミュレーションには、注目する不合格を何度も数えられるだけの試行が必要です。0.4 mm未満が約3.29%のとき、20,000回の試行ではそのようなすきまが641個数えられ、割合は±0.13パーセントポイント程度に絞られます(単純なランダムサンプリングの標準誤差1つ分。既定のラテンハイパーキューブサンプリングは、通常これより少し良くなります)。ppm(100万個あたり)の不良率には数百万回の試行が必要で、仮定が成り立つなら理論式を使います。
寸法に相関を付けられますか?
xellstormでは寸法に相関を付けられます。「Distributions」ステップで2つの寸法に順位相関を指定します(たとえば同じ棒材から切り出した2つの部品)。2つの部品が正の相関なら、すきまのばらつきは広がります。ハウジングと部品が正の相関なら、すきまは部品をハウジングから引いたものなので、ばらつきは狭まります。単純なRSSの式は独立を仮定しているため、どちらの効果も見逃します。
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